近年は精神病や社会不安障害を取り扱うテレビ番組も多くなってきて、昔よりかは一般的に理解が進んできていると思う今日この頃。ある人に言わせれば、誰しも人に言ってないだけで自分独自の症状を抱えている人が大半だとか。
実は、俺も【会食恐怖症】っていう社会不安障害持ち。13歳くらいから発症したから、17年くらいこの病気と付き合ってる。
結論をいうと、今はかなり症状が緩和されていて、仕事や付き合いでの外食・会食くらいならOKな状態になった。
元々の状態が「外食する可能性のある行動」が不可能だったことを考えると、かなり改善したと思う。わざわざこのページを見てくれてるってことは、会食恐怖症に悩んでるか、身近に悩んでる人がいると思うから、自分なりに改善していった方法を紹介するので、参考にしてほしい。
会食恐怖症ってなに?
簡単に言うと、人前で同席してると様々な症状が出て食事が出来なくなる社交不安障害。医師ですら知らない人もいるくらいマイナーな不安障害で、まず一般人はしらないしどういう感覚になるかもわからないと思う。
自分の食べ方が汚いから恥ずかしいとか、遠慮をして食事を残しているのではなく、物理的に食事がとれなくなっちゃうから、面白いことに腹が減っていても食べれない状態になる。
どういう症状なの?
自分の場合は、動悸が激しくなり呼吸が浅くなる→手足がカッチカチに冷たくなる→口の中の水分がどっかに消えてのどまでカサカサ→強烈な吐き気・えづき→吐く(何も出ない)が定番だった。
普通の人に説明するときに自分がよく使う例えなんだけど、1500m走を全力でやった後に吐き気をプラスする感じが一番似てる。もちらんそんな状態では食事どころじゃないし、丸くなって吐き気を抑え込むことしかできない。
やっかいなことに食べる時だけに発症すればまだいいんだけど、誰かと同席で会食する可能性のある行動を提案されるだけでオートマチックに発症してしまう。
友達とかと楽しく話してて「あ、これからカラオケに行こうぜ」とか言われるだけで発症したりする。なんなら言われる可能性がある場にいるだけで発症する。誰かとお昼の時間を一緒に過ごすと思うだけで、会食してなくても発症してしまう。無駄に高機能。
日常生活で想像以上に影響がデカい!
自分の意志とは関係なくオートマチックに発症するから、外食をともなう行動に自分から制限をかけてしまう。これが思った以上に日常生活に縛りをかけてくる。まさに人生縛りプレイ。
遊びの誘いは嘘で誤魔化す
せっかく友達や彼女(いなかったけど)が遊びに誘ってくれても「食事があるかも」と思った時点でオートマチックに発症。「今日都合悪いわ」とか嘘ついて内心ホッとする…。本当は行きたいのに、迷惑をかけたり、心配をかけたり、恥ずかしいやらで二の足を踏む。これではいかんと勇気を振り絞って会食してみても、やっぱり食べられないので失敗体験ばっかり増える。下手すると吐く。
嘘で誤魔化すことも自己嫌悪だけど、実際に会食でパニックになるのはもっと嫌なのだ。
自分を客観視して絶望する
考えてみてほしい、食事のたびに青ざめて震えながら少し食べ、トイレに通う人を見てどう思うだろう。「食事のたびに具合が悪くなるなんて、素敵!」とはならないだろう。大体の人はマイナスに見るだろうし、自分でもそう思うから余計に症状が強化されてしまう。
会食恐怖症は性格を内向的に仕向ける
事実、自分の場合でも会食恐怖症になってからより内向的になったし、交友関係も増えないからどんどん減っていった。新しいことに挑戦することも避けるようになった。
会食恐怖症は、内向的で消極的な性格に誘導しやすい。思春期は特に人格にまで影響してくる。
効果のあった改善方法
会食恐怖症はマイナーな病気だ。自分が発症した17年前は全くと言っていいほどネットに改善情報なんてなかった。今調べてみても実体験を基にした改善記録はあまりなかったから、自分が書こうと思う。確実に効くか分からないけど、一度試してほしい。実体験に基づく改善方法だ。
深呼吸(酸素を取り入れる)
症状が出てる時はたいてい呼吸が浅くなって、前傾姿勢になりがち。呼吸が浅いと十分に酸素が取り入れられないし、自律神経が乱れる。前傾姿勢になると、肺と腹部が圧迫されて呼吸しづらくなるし周りの状況が分からなくなる。周りが見えないと、みんなが注目してるような気がしてきて焦ってしまう。
まず胸を張って深呼吸をしばらく繰り返そう。これで息苦しさは幾分かマシになる。最初の数分は苦しいままだと思うけど、しばらく繰り返すと体のほうから精神を楽にしてくれる。酸欠は精神に悪い(名言)。
胸を張ると周りの環境がよく見える。当たり前なんだけど、ほとんどの人は自分に注目すらしてない。焦る必要もないことが分かると、ほんの少しだけ余裕が出る。この余裕が大事。
周囲に自分が会食恐怖症だと言いまくる(周囲の理解)
これは最初の一歩が滅茶苦茶怖いんだけど、一回言ってしまえば次の人には言いやすくなるから是非やってほしい。カミングアウトする方はドキドキなんだけど、言われた方は大抵「ふーん」で終わるから。自分の周りに知ってる人が多ければ多いほど、食事のたびに説明する必要もなくなるし「あっ、俺食えねぇからコーヒーだけ頼むわ」の一言で、食事という恐ろしいイベントを回避できる。
この「回避できる」というカードを手札に入れておけば、いつ「食事という敵」が来ても大丈夫と思える。そうすると少しだけ余裕が出てくる。この余裕が大事。
食べ残すことを前提に食事を楽しむ(開き直る)
上の2つを実践してみて、ちょっと余裕が出てくると、ほんの少しなら食べられる気がしてくる場合がある。絶対全部は喰えないけど、ほんの一かじりくらいなら食えそうな気がするなら、その一かじりを楽しんでみよう。残ったら全部捨てよう。この際もったいないとかクソ食らえだ。捨てるために少し食べるくらいの気構えでいこう。
少しなら食べれたという小さな成功体験を繰り返すと、「次も少しなら食べられる自信」がついてくる。そうすると少しだけ次の食事に対して余裕が出てくる。この余裕をどんどん大きくしていこう。
爆裂に美味しいものをあえて食べる(感動で恐怖を塗りつぶす)
ここまでくればかなり改善してきていると思うけど、これはちょっと難易度の高い方法かもしれない。
俺の場合、会食恐怖症をかなり改善できた方法なんだけど「こういう環境なら、ちょっとだけなら食べられるわ」と思えるメンタルになってきたら試してほしい。成功して何回か繰り返せば、かなり大きな成功体験を手に入れられる。
まだ食事を目の前にして一口も食べられない状態なら意味がないからやめたほうが良い。
会食恐怖症になると、どうせ残すから高い店に行けなくなるんだけど、そこをあえて高くてもいいから激烈に美味しいものを出す店に行ってみよう。爆裂に美味しいものを口に入れるとあまりの美味さに、羞恥や恐怖を塗りつぶすことがある。
口に入れた瞬間笑い出すほど美味しいものは、精神状態を一気に幸せ状態にする。もうこの状態になったら、普通に飯が食える。信じられないんだけど、目の前のご飯が美味しいと感じられる。ちゃんと唾液が正常に分泌してくれる。
ある種のショック状態なんだけど、普通に飯が食えるという大きな成功体験が大事。大きな成功体験は、大きな余裕を与えてくれる。
改善効果のなかった方法
ここでは逆に、試してみたけど効果がなかった方法を紹介しよう。自分と同じ過ちを繰り返さないように。
食前胃腸薬の服用(意味なし)
食前胃腸薬という存在、ご存じだろうか。こいつは優れもので、脂っこい食事の前や飲み会の前に服用すれば、食欲の増進、翌日の胃腸は荒れにくいなどメリットが沢山。素晴らしい。
でも残念なことに会食恐怖症には効かなかった。確かに食事前に服用すると胃がスース―してお腹が鳴りまくる。胃腸は絶好調になるんだけど、全く食欲がわかない。面白いことに、会食しない時に服用するとちゃんと効いてしっかり食欲も促進された。
会食恐怖症はなにも胃腸の調子が悪いから食べられないわけではなく、起こる症状によって結果的に食べられなくなるのだ。だから症状を抑えられない食前胃腸薬は意味がなかった。
食欲増進のツボ(藁にもすがる思い)
会食恐怖症の人は、「食欲がない」から会食できないと思いがち。自分ももれなくそう思っていた時期があって、どうやれば食欲を引き出せるか調べていた時期があった。そこで目に入ったのがツボの本。もはや藁にもすがる思いでツボの本を買った。
体の食欲増進のツボを刺激して、会食の時に「食欲」を引き出す作戦。結果は言うまでもなく全く効果がなかった。理由は簡単。無意識におこる精神的なプレッシャーで食べられない状態になるのであって、食欲がないから食べないという訳ではないから。原因と結果を間違えたのが敗因だった。
考えなしに会食を繰り返す(失敗体験→トラウマ)
これはやりがちな失敗だと思う。特にまだ自分が会食恐怖症だと分かってない、初期にやりがち。人前で食べられないのは「気のせい」、もしくは「その時たまたま調子が悪かっただけ」。そう思いたくて、無理に会食を繰り返して、失敗してしまう。全然食べれない、同席した人たちに心配させてしまう、恥ずかしい、でも自分でもなんで食べられないのか分からない。
失敗体験を繰り返すと、「次の会食も、やっぱり食べられないんじゃないか」と思うようになるし、会食の前から憂鬱になる。会食自体が嫌になるし、会食を含む全部のイベントに行きたくなくなる。酷いとトラウマになって、想像するだけでパニックになる。改善どころか悪化してしまう。
一番良いのは、症状が軽いうちに改善すること。自分から失敗体験を積み上げることはしてはいけない。
根性論で無理に食べる(絶対やってはいけない)
一番やってはいけないのが、根性論で無理やり食べること。
実際に、会食恐怖症を発症するケースとして完食指導がよくあげられる。完食指導とは、学校等で絶対に給食を残させない、食べ終わるまで昼休みを与えないという指導。食べ物を大事にする心は大切だけど、食べること自体に不安感を抱かせる戦犯的な指導方法だ。学校に限らず、家庭や部活でも行われている場合もある。
どちらにせよ、根性だけで無理やり食べるということは、食事の楽しみを消し去り、プレッシャーに耐えながら無理やり胃に流し込む行為に他ならない。食事に対して余裕を持つこと、焦りを感じないこと、残してもいいと思えることが改善の糸口なのに対して、真逆の行為。当然、会食恐怖症の人は悪化するし、そうでなくても発症を助長する方法なのだ。
最後に
この記事を作成するにあたり、発症してからの過去17年間を見つめなおす機会になった。今はかなり症状が良くなって、初対面の人とも人並みには食べられるようになったけど、一番酷かったときは会食を想像しただけでトイレで吐いてた。
あの頃は症状がここまで良くなるなんて思ってもみなかったし、将来にも絶望してた。人から見れば、「会食が出来ないくらいで大げさな」と思うかもしれないけど、当の本人にとってはそのくらい大きな人生の障害だと感じるはずだ。
会食恐怖症に限らず精神的な病気は孤独だと思う。誰にも自分の辛さは理解されないし、病気の人と思われるのも嫌だと思うから病気のことを人に隠す。だからこそ、まず身近で信頼できる人に打ち明けることから始めてほしい。この病気は一人で解決するには荷が大きすぎる。
美味しい食事を食べることは、一番簡単に幸せになれる方法だと思う。身近な幸せを取り戻すためにも、諦めず克服に挑んでほしい。